金澤敏明氏の名言。「コマ得とコマを失わないは同意」
金澤敏明氏が教える試合巧者な有段者たちの上級将棋
2回目の講習では初回とは打って変わってアクティブな将棋で勝つ考え方を伝授してくださいました。序盤戦でいったん玉を保護する動きは捨てて、駒取り合戦の準備をするという大胆な発想でした。
というのも、金澤敏明氏や山下敏子氏らの親善杯を見ていて、駒組みの共通項を見つけたり、想像をしてシミュレーションしながら盤面を想定しながら私が上手く融合して考えてみた結果です。
練習相手と実戦で指してみて分かったことですが、最初の数手は暗記して臨んでいたりするので、意外に上手くいきますが、手が進むにつれて、金澤敏明氏らの指し方がメモ無しには思い出せなくなり、途中からずさんでしまう結果に。
もちろんそんなことは致し方のないことであり、終盤まで丸暗記は常人には無理な話なので、都度現れた局面に対して、その場で自分の意思で対処していく場面はやってきます。
そこで役に立ったのが、金澤敏明氏の上級講座での教えでした。
金澤敏明氏は試合巧者な人は必ずといっていいほど、駒を得しながら指しているというところに着目し解説してくださいました。
駒を得するということは、常に自分より相手がウエポンをチラつかせてプレッシャーを与えている状態。
もちろん実際に盤面に登場させる脅威にもなりますし、精神的焦りを相手に常に与え続けています。
初級~中級と戦術ばかり習得してきても意外と見落としなのがこういう初歩的な発想だったりするものです。
将棋は駒落ちを除いては原則、どちらも五分五分の状態からゲームがスタートします。
したがって、言葉が悪いですがある種の略奪戦争であり、相手の駒を奪うほどに戦力は拡大し、失うと逆に脅威になっていきます。
ただし、駒は枚数が多ければいいというわけでもなく、先手が飛車を奪って後手が歩を奪ったとしたら飛車を持っているほうが当たり前ですが優位にたちます。
金澤敏明氏がコマ得の大切さを訴えていて、一番力説したところが、自分も奪われないということ。
ゲームがスタートして序盤から駒の交換がはじまり、反映されるのは中盤以降になるため、序盤は駒取りがはじまる前の保留期間です。ただし、勘違いしてはいけないのは、駒取りを意識しすぎるのではなく奪われないことも意識することです。
金澤敏明氏は将棋を実際の戦国時代の争いに置き換えて解説していました。
たとえば将棋が合戦で城や堀、塀を築いて大将がやられないようにするゲームだと考えると、玉の陣地を左か右のどちらかに決めて移動させて、玉が左に陣地を構えるときは、守りを左に、攻めが右へ移動。
このとき守りが手薄になると大将はピンチになるわけで逆に攻めが手薄になると攻めきれなくなります。
このバランスについて金澤敏明氏は具体的な数値を列挙してくださいました。
玉を囲う城壁として金、金、銀を三枚チームで守る考え
玉を左右いずれかに移動させて近くに金銀チームを配備する
攻めは飛車、角行、銀将、桂馬をチームと考える
飛車のある筋を中心に歩を前に進めながら、銀で歩をサポート。
飛車が遠方まで威嚇できている状態で、角と桂馬で後方サポートし玉を目指して前進していく。
この発想の延長に「駒を奪われない」ことが前提にあれば理想的なのだと解説してくださいました。